裏本 下

成年コミック

コンカフェ嬢との距離感、こんなに丁寧に描けるんですか

上巻が「覗き見」と「浮気」という刺激的なシチュエーションで攻めてきたのに対し、下巻はガラッとトーンが変わります。裏筋侍先生が「初めての連作に挑戦した」と後書きで語る「そういうコンセプト」全3話が、下巻のすべてといっても過言ではありません。207ページ、丸ごと1作品の世界観に浸れる、これが下巻の大きな特徴です。

「客とするなら誰とでも寝る」、でもその顔はどこか寂しそうで

コンカフェ嬢のりおんは、推しがいる主人公・航が通い詰めるうちにねんごろになった女の子です。「客にするなら誰とでも寝るから」と平然と言い放つ彼女ですが、その顔にはどこか寂しさが滲んでいます。この一言と表情の組み合わせが、もうずるいんですよね。軽そうに見えて、実は深く傷ついているものを抱えている——その複雑さをキャラクターの顔ひとつで伝えてくる裏筋侍先生の表現力に、最初のページから引き込まれます。

エロ漫画と一般漫画の「中間」を狙ったって、どういうこと

裏筋侍先生自身が後書きで「一般漫画とエロ漫画の中間を目指した実験的なシリーズ」と言っているのが、読んでみると腑に落ちます。導入部分のドラマパートがしっかり長くて、キャラクターとの関係性が積み上がってからエロシーンに入ってくる構成になっているんです。だからエロシーンの「重み」がまるで違う。「このふたりの関係、ここまで来たんだ」という感情が乗っかってくるので、同じシーンでも受け取り方が全然変わってくるんですよね。

しかも「3話じゃ足りない!」という先生の言葉通り、3話で綺麗に完結しているようでいて、読み終わった後に「もっと読みたい」という気持ちが強烈に残ります。終盤に出てくるクラ◯ナー対決については、もはやバトル漫画の主人公を描いている気分だったと先生が語るほどの気合いの入れよう。エロ漫画でそんな感想が出てくること自体、この作品がいかに普通じゃないかを物語っています。

距離感・湿度・温度、すべての解像度が高い

りおんというキャラクターの魅力は、「近いようで遠い」絶妙な距離感にあります。体の距離は近いのに、心の部分にはまだ壁がある。その壁がじわじわと溶けていく過程の描写が繊細で、コンカフェという特殊な空間の持つ湿度みたいなものがページからにじみ出てくる感じがします。裏筋侍先生の絵はもともと繊細なタッチが持ち味ですが、この作品では特にキャラクターの「目」の描写が圧倒的で、感情を言葉にしなくても目だけで全部伝わってくる場面が何度もあります。

上巻と合わせて読んで初めて分かる、裏筋侍の幅

上巻は「フラチ」「浮気と本気」という短編2本で裏筋侍先生のエンタメ力を堪能できる構成、下巻は「そういうコンセプト」という連作1本でじっくりドラマを楽しむ構成。同じ作者なのにここまでテイストを変えて、どちらも高水準で仕上げているのが本当にすごい。2025年3月28日にコアマガジンから上巻と同時発売、電子書籍でも読めます。上巻だけで満足してしまった方も、ぜひ下巻まで手を伸ばしてみてください。りおんのことが忘れられなくなりますよ。